最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)1620号 判決 1959年8月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人色川幸太郎、同林藤之輔の上告趣意第一点について。
所論は、原審において主張せず、従ってその判断を経なかったものであるのみならず、所論為替管理に関する法令規則等が憲法二九条に違反する旨の主張は「判示第二乃至第五の父母兄弟、会社本店の顧問弁護士会社元社長の子女に対する送金のごときは、外国人が外国で取得した外貨預金に関する限りそれをいかに処理しようとも、日本国の国際収支の均衡を害することはあり得ないし、資本の逃避とはいかなる関係もないものである」との所説を前提とする主張であるが、かかる「小切手が判示の目的に使用されず、判示第一の如き外貨と円貨の交換に使用されるような管理目的に反する事態もあり得ること」は論旨も、また自認するところであり、当初は、その意図で振出された対外支払手段であっても、元来流通性を特性とする小切手の性質上、原因関係とは独立して流用されないことは保し得ないのであるから本邦内において振出されるかぎりこれが管理は所論のように外国為替管理と無関係と断ずることのできないのは自明であって、所論違憲の主張はひっきょうその前提においてあやまっているものというべきである。
また、同様の理由により所論、日米通商航海条約一二条違反の主張も採用することはできない。
同第二点、第三点について。
所論原判示の正当であることは当裁判所の判例とするところであって、(昭和三三年(あ)一四五二号、同三四年二月五日第一小法廷決定、刑集一三巻一号三五頁)所論判例違反の主張はいずれもとることができない。
また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)